『情緒的に健康な教会をめざしての著者、ピーター・スキャゼロ牧師は、「リーダーシップを支える五つの言葉」の中で、クリスチャンのリーダーがどのようにしたら、神との関係を見失わずに、ミニストリーを続けて行けるか、五つのポイントにまとめて次のように語っています。翻訳文中の（）内の文書と※注は私の補足です。
元記事：
5 Words that Ground My Leadership – Emotionally Healthy Discipleship
The greatest danger in Christian leadership is to forget God.
www.emotionallyhealthy.org
リーダーシップを支える五つの言葉
クリスチャンのリーダーシップにおける最大の危険は、神を忘れてしまうことです。それはあまりにゆっくりと起こるので、私たちはほとんど気がつきません。私たちが気づくのは、その症状が現れた時です。イエス様の軽く負いやすいくびきが、いつのまにか、重く担いきれないものになってしまうのです。私たちは、手っ取り早い解決策を探し始めます。しばしば、ミニストリーの舵を取るために、この世のビジネスのやり方に依存し始めるのですが、それは霊的な根につながる幹に、世俗的な枝を接ぎ木することを意味します。
私が地に足をつけて歩むために、次の５つの言葉が助けとなっています。それぞれがイエスの逆転の王国（※注１）の異なる特徴を要約しています。
◆時間をかける
私は、何か目標を建てた時に、それを達成するために、当初考えていたより、少なくとも二倍から三倍は時間がかかるのではないかと考えています。他の多くの方たちも同様ではないでしょうか。神の国は、今も、そしてこれからも、ゆっくりと成長するからし種のようなものです。パウロは、リーダーシップを、女性が出産するときに経験するゆっくりとした痛み（陣痛にたとえています。
［ガラテヤ書４章１９節］ （私の子どもたち。あなたがたのうちにキリストが形造られるまで、私は再びあなたがたのために産みの苦しみをしています。）
（イスカリオテの）ユダや、熱心党員たちをいらだたせたのは、（神の国の働きに伴う）このゆっくりとした痛みです。早急に結果を求めた彼らは、神がなさっていることを見逃してしまったのです。ですから、私は毎日、「急いでいないだろうか？」と自分に問いかけています。
◆見極める
キリストに従う者は誰でも、死と復活のリズムを、生活の中で経験することになります。私たちは生きて死ぬだけでなく、死んで生きるのです。私たちの信仰が刷新され続けるためには、自分の様々な計画の死（すなわち計画が立ち消えること）と向き合い、神との関係の中で、何が必要性を失いつつあるのかを見極めることが不可欠です。ですから、私は毎日、「耳をかたむけているだろうか？」と自分に問いかけています。
◆愛する
私は説教の準備に二十時間を費やし、聖書の教えに没頭するあまり、自分が話しかけようとしている肝心な人々の顔を忘れてしまうことがあります。そうすると、一人一人に思いを向けず、深く祈らずに、愛することなく、文章を書き、ミニストリーを続けてしまうことになります。ですから、私は毎日、「人々を愛しているだろうか？」と自分に問いかけています。
◆悲しみを受け入れる
人生には喪失がつきものです。しかし、私たちリーダーが目を向け、受け入れなければならない喪失は、通常よりも大きいと私は思います。多くの人がそうであるように、私は痛みを最小限に抑え、否定し、注意をそらし、非難し、怒りを向け、その痛みを薬で和らげたいと思うことがあります。しかし喪失は、様々な死（すなわち自分の願望、働きや計画が絶たれること）と向き合うために、大切な気づきを与えてくれるのです。（私たちが喪失を受け入れることによって、）新しい賜物が生み出されるようになります。ですから、私は毎日、「目を向けているだろうか？」と自分に問いかけています。
◆限界を受け入れる
限界という神様からの賜物を受け取ることは、今でも、私のクリスチャン生活における最大の課題です。神様が私の周りに設けた限界は、私の自己中心的な意志、反抗心、そして自分で全てを切り回そうとする欲求をあらわにします。私はしばしば、自著『情緒的に健康な教会をめざして』の『限界という賜物を受け入れる』という章を読み返し、聖書の根本的な真理を思い起こすことにしています。ですから、私は毎日、「身を委ねているだろうか、それとも抵抗しているのだろうか？」と自分に問いかけています。
この五つが私のキーワードです。あなたは、リーダーシップが要求される中で、神にしっかりと根を下ろすために、どのような言葉を付け加えますか？
心を込めて
ピート
※注１ 逆転の王国
神の国とはメシアの支配される王国を指しています。神の国は、この世の文化、国家、組織、あるいは宗教に見られる支配構造とは、相反する価値観の上に成り立っています。メシアである神の御子は、しもべの姿をとってこの地上に来られ、十字架の死と復活を通して、神の国を打ち立てられました。
メシアは、ご自分の民から拒絶され、反逆者として汚名を着せられ、ローマ帝国の統治者の手に渡され、処刑されたのです。人間の目には敗北にしか見えない十字架の犠牲の死を通して、メシアは、人間を抑圧していた罪と死、悪魔の力に勝利されたのです。復活はその霊的な勝利の証しです。
メシアがもたらした神の国は、今、キリストのからだである教会を通して、天と地をつないでいます。聖書は、まだ未完成であるこの神の国が、キリストの再臨とともに、やがて完成されると教えています。
この神の国では、恵みによって罪が赦され、敵を愛し、迫害する者のために祈り、仕える者が、王であるキリストとともに治め、自分を低くする者が高くされ、豊かに与える者が豊かに与えられ、弱さを通して神の力が現わされ、自分のいのちをささげる者が、永遠に生きるのです。神の国の価値観と文化は、権力と富みで支配するこの世界にとっては、まったく異質で受け入れがたいものなのです。
この逆転の王国を治めておられるのは、しもべの姿をとってこの世界に来られ、救いの道を開くためにご自身を犠牲にされた方、イエスキリストです。
※注２ 熱心党員とイスカリオテのユダ
熱心党は、ローマ帝国の圧政から、ユダヤを解放しようとした過激な民族主義者の集団でした。彼らは武力を用いることも厭いませんでした。十二弟子の一人が、熱心党のシモンと呼ばれていますが、このシモンもこのような思想の持ち主であったと思われます。
熱心党員に限らず、ユダヤ人たちの多くが、来るべきメシアを、自分たちを解放する、政治的な英雄、解放者として考えていました。イスカリオテのユダが、なぜイエスを裏切ったのか、その動機について聖書は詳細には語っていません。しかし、イエスの神の国が、自分の求めていたものではないことを知り、イエスが十字架の死に向かって進んで行く姿を目の当たりに見て、期待を裏切られ、それがユダがイエスを売り渡した動機となったのかもしれません。
一方、熱心党員シモンと他の弟子たちは、復活されたイエスと会い、イエスが教えた神の国がどのようなものであるかを理解するようになります。その後、聖霊の力を受けた彼らは、キリストの証人として立ち上がり、大胆に神の国の福音を伝えるようになったのです。
